昨日の投稿の続き。今日は「楽観論」について書くことにする。(昨日の動画も下に添える)
1.佐藤栄佐久前福島県知事が外国特派員協会で会見
2.心からの叫び 元原発技術者菊池洋一さん中部電力静岡支店で訴えた
僕はこの楽観論は日本の至る所に蔓延っている主たる問題だと常々思ってきた。「事なかれ主義」「性善説」「なんとかなるさ」ざっとこんな言葉が頭に浮かぶ。要するに、実現するかどうかの裏付けがないまま事が進み、後付けで何とかしようと取り繕う姿勢だ。よくあるよね?
例えば僕が知人から聞いた話だ。新しい商品(業務パッケージ)に向けてのプロジェクトが発足された。本来ならばこのプロジェクトの発足時から技術者を入れておくべきだ。でないと本来工程表や稼働時期予測などができない。しかしこのプロジェクトは一部上層部(役員・株主)で希望的観測による発売時期目標が定められ、知人が参加した会合では関連会社を含めた大々的な発表会になっていた。そもそも商品のコンセプトも決まっていないのに、である。商品発売は10か月後!ダルマの目入れ式は粛々と進む。知人は絶対無理だと心の中で叫んでいたのだが、とても言い出せる状況にない。そして宴もたけなわの頃、1人の出席者が「ところで、10か月で大丈夫なの?」...『あの時無理だって言えば良かったんだ。今でも後悔している。俺たちが開発している商品は技術計算も多く含むので問題が生じると訴訟問題になるし、過去の商品でお客様から戴いていたご要望・開発者として実現させたい夢などもあったから。でも全体が突き進んでいるあの場では言えなかった。それに何の根拠もないが、(気合を入れて頑張れば何とかなるかも知れない)とも思ってしまった。精神論が出てしまったんだよね。』何とか回復可能な工数なら挽回できるが、そもそも商品コンセプトという一番大切なマップがない。営業を含めた商品構想会議もそう簡単にはまとまらない。個々の営業事情もあり、丁寧な議論とプレゼンを重ねれば時間がかかって当然だ。工期が差し迫るとソフト開発会社をあたりまっくて人員増員作戦。しかし新規参入のプログラマには商品コンセプトなどそうそう簡単には伝わらない。意図せぬ成果物。作っては修正。部長は「元々10人体制で工数1年なら、20人で半年に縮まるはずだ。」そんなに話はうまく進まない。構想・設計・新規技術の習得・作業者への伝達・検査・上司への辻褄合わせ的な状況報告。殆ど休みなし。度々続く徹夜の日々。結局、営業や技術者が反対するにも関わらず上層部に押し切られ発表後1年半で商品販売。商品が不安定なため市場の不評を買い、落ち着くまでに3年。知人は『2年あれば内容も品質も安定した商品が完成したと思う。あの頃は始めの期日に何とか間に合わせようと兎に角作る事にしたので、作業も混乱したし後戻りも多かった。初めて一緒に仕事する委託者に伝えるのは難しかった。それに多く蓄積していた要望も何とか入れた形の商品にしたかったから。でも何を言っても今となっては言い訳だけど。』
...これって僕の会社の事かって?...秘密だよ(笑)
「市場が今攻め時だから」「営業が売り玉がないと嘆いている」「ウチの商品は市場から陳腐化されていると思われてないかな?」営業の苦労・上層部の狙い・充分に理解する。僕も営業同行やお客さんへのサポート活動で痛いほど感じてきたから。でも出来ないものは出来ない。しかし実務者はそれを言い訳と自問自答する時があるのだ。そういう形で、何の根拠もない構想と希望的時期が有無を言わさぬ全体行動へと繋がり、理論武装だけでは止まらない強いうねりに流される。こういう経験をお持ちの方は世の中に多いと思うのだが。
...でも絶対してはいけない事なのだ。結局は品質を損ねるから...
このような話を、元原発技術者の菊池さんが語っていますね。僕は菊池さん他作業員のご苦労を痛いほど感じる。ジレンマがよく分かる。そのような問題を生み出すのは、よく実情を理解していない人の「楽観論」と、それを何とか実現しようとする実務者の「精神論」なのだと思います。しかもその楽観論の根拠が単なる金の話だとしたら、もう悲劇だ。
神保哲夫氏・宮台真司氏・青木理氏など「のマル劇トークオンデマンド」で「あえて最悪のシナリオを考える」という特集を組んだり、上杉隆氏が「まずは最悪の状態を想定してオフセットを大きくとり、徐々に狭める」という発言をしていた。彼らは「パニックを生む原因になる」とか「風評被害に繋がる」などと批判を受けたらしい。しかし僕は別に責められる行為とは思わない。むしろできる限りのシュミレーションを行う為に考えられうるシナリオを想定して其々に行動指針を定める事は重要な事で、単にその中で最悪と思う所をピックアップして基準を定めた話に過ぎない。想定外のアドリブ行動をなるべく回避するためにシュミレーションするのだから。自己の行動を安全にするためなのだから。
下らない例だけど、将棋だって相手の打ち手を想定しながら勝負するよね?麻雀だって手持ち13パイで勝負できるほど自分に自信が無かったら安パイ持っておくでしょ?それが最悪のシナリオ想定だよ。普段からやっている事じゃないか。
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